ここ数年、「インフルエンサー・マーケティング」という言葉の代わりに「クリエイター・マーケティング」という言葉を使う記事やツールが一気に増えました。
海外の解説記事を見ると、
- インフルエンサーマーケとクリエーターマーケは全然違う
- インフルエンサーマーケは古い、これからはクリエイターマーケだ
と、もっともらしく説明しているものも多いです。
ただ、私の立場・意見としてはかなりシンプルで、
基本的には、業界の都合で名前を変えつつあるだけだ
と考えています。
その背景には、
- インフルエンサーマーケティングという言葉につきまとってきた「ペイドキャンペーン」のイメージ
- そこから距離を取りたいという業界全体の空気
- そして「本当に効くのは、ブランドのファンによる信憑性のある投稿だ」という共通認識
があります。
この記事では、その流れを整理しながら、
インフルエンサー・マーケティングとクリエイター・マーケティングの「本当の違い」を、私の考えとしてまとめます。
クリエイターマーケティングとは?
Creator Marketing
クリエイターマーケティングとは、ブランドが主にSNSなどのデジタルプラットフォーム上で活動するコンテンツクリエイターとともに、クリエイターが発信するコンテンツを通じてブランドの認知・好意・購買行動の向上を図るマーケティング手法です。
インフルエンサーマーケティングとは異なり、主たる対象をフォロワー数や到達規模といった「影響力」を持つ人物に限定せず、ブランドとの親和性が高く、質の高いコンテンツを継続的に生み出すクリエイター全般と捉える点に特徴があります。
インフルエンサーマーケティング vs クリエイターマーケティング 比較表
| 観点 | インフルエンサーマーケティング | クリエイターマーケティング |
|---|---|---|
| 定義 | ブランドが主にSNS上で多くのフォロワーを持つインフルエンサーとともに、インフルエンサーの影響力を活用したコンテンツ発信によって、ブランドや商品の認知・好意・購買行動の向上を図るマーケティング手法。 | ブランドが主にSNSなどのデジタルプラットフォーム上で活動するコンテンツクリエイターとともに、クリエイターが発信するコンテンツを通じてブランドの認知・好意・購買行動の向上を図るマーケティング手法。 |
| 根本にある考え方 | インフルエンサーの「影響力」をメディアの一種とみなし、リーチや販売効果を得るために一時的に借りる発想が強い。取引ベースでの露出獲得に軸足が置かれやすい。 | クリエイターをブランドやプロダクトのファン/共感者として捉え、その人ならではの表現から生まれる本物の声(オーセンティックなコンテンツ)を共創する考え方。関係性と信頼を前提にした発想。 |
| 対象(誰をどう捉えるか) | 主な対象は、SNS上で一定以上のフォロワー数や到達規模を持つインフルエンサー。「影響力(フォロワー数・リーチ)」を価値の中心に置いて捉える。 | 主な対象をフォロワー規模の大きさに限定せず、ブランドとの親和性が高く質の高いコンテンツを継続的に生み出すクリエイター全般と捉える(その中にインフルエンサーも含まれる)。 |
| ブランドファン(アドボケイト)の位置づけ | 主役はインフルエンサーであり、ブランドファンの自発的な発信はインフルエンサー施策の周辺で生じる副次的な効果として扱われることが多く、関係構築が設計として組み込まれない場合も少なくない。 | 既存のブランドファンのうち、SNS上でUGCを投稿している人々をクリエイター/アドボケイトとして重要な層とみなし、シーディングやコミュニケーションを通じて継続的に発信してくれる存在へ育成していく前提に立つ。 |
| 中心となる価値軸 | リーチ規模・フォロワー数・オーディエンス属性など、「どれだけ多くの人に届くか」が中心。 | コンテンツの質・創造性・世界観・ブランドとの親和性など、「どのようなコンテンツを生み出せるか」が中心。 |
| 主な目的 | 短期間での認知・話題化やキャンペーンのブーストなど、スポットでの露出・拡散。 | ブランドらしいコンテンツを継続的に生み出し、中長期で認知・好意・購買行動を高めていくこと。 |
| コンテンツ発信の動機づけ | 投稿◯本に対していくら、といった特定の投稿枠・露出に対する金銭報酬や、商品提供と投稿義務をセットにしたインセンティブが中心で、メディア枠の購入に近い発想。 | 投稿義務のないプロダクトシーディングやイベント招待で自発的な発信(アーンドメディア)を促しつつ、成果指標を伴う年間契約型のペイドパートナーシップも組み合わせる。オーガニックとペイドを一連の関係として設計しやすい。 |
| 関係性の期間 | キャンペーンごとのスポット起用が中心になりやすい。 | 中長期のパートナーシップとして継続的に関係を構築するケースが多い。 |
| ブランド側の関わり方 | メッセージや表現内容を事前に細かく指定しやすく、その結果として広告的なトーンになりやすい。 | プロダクトシーディングなど投稿義務のない施策では、投稿するかどうかや内容をクリエイターに委ねる。ペイド案件では方向性やガイドラインのみ示し、具体的な表現やストーリーはクリエイターの創造性に任せる。 |
一方で、この定義の裏側には、より感情的・歴史的な文脈もあります。インフルエンサーマーケティングという言葉には、初期に広まった「お金を払って投稿を買う手法」というイメージが強く残っており、いまだに「少し汚れた商売」と捉える人も少なくありません。しかし、現在のインフルエンサーマーケティングの現場は必ずしもそうではなく、「本当にそのブランドを好きな人としか組まない」「ファンであることを前提に起用する」といった方針を持つブランドも増えています。それでもなお、「インフルエンサーマーケティング」という言葉を聞いた瞬間にネガティブな印象を持つ人が一定数いるため、そのイメージから距離を取りたい、という思惑は確実に存在しているように見えます。
こうした背景を踏まえると、先ほどの比較表を見たときに、この領域に長く関わってきた人ほど「クリエイターマーケティングとは、かつてインフルエンサーマーケティング2.0やOrganic Influencer、Authentic Influencer Marketingなどと呼ばれていたものと本質的には同じだ」と感じるかもしれません。インフルエンサーマーケティングのイメージ悪化と、「本物のコンテンツでなければ影響力を持たない」というごく当然の認識から、そうした“アップデート版インフルエンサーマーケティング”の概念が生まれてきました。
ただ、どれだけ中身をアップデートしても「インフルエンサー」というラベルを使う限り、その言葉にまとわりついたイメージに足を引っ張られてしまう。結果として、インフルエンサーという語をあえて外し、「クリエイター」というよりクリーンでポジティブな呼び名に乗り換えたのが、現在の「クリエイターマーケティング」という用語なのだ──と理解することもできると思います。
1. 業界で使われてきた「インフルエンサー・マーケティング」とは
1-1. 定義は人によって全然違う
インフルエンサーマーケティングの定義は、人によって本当にバラバラです。
- 「インフルエンサーにお金を払って投稿してもらうこと」
- 「インフルエンサーとコラボするあらゆる取り組み」
- 「口コミやUGCも含めた、インフルエンサー周りすべて」
ただし、現場レベルで共通している“空気”はあります。
1-2. 実務では「ペイドキャンペーン」を指すことが多い
多くのブランドや代理店が「インフルエンサーマーケ」と言うとき、頭の中にあるのは、
「インフルエンサーに報酬を払い、特定期間のキャンペーンとして投稿してもらうこと」
です。
そのため、インフルエンサーマーケティングという言葉には、かなり「広告キャンペーン」のイメージが強く染みついています。
2. なぜ「インフルエンサー」という言葉が重くなってきたのか
2-1. 消費者は「案件感」を見抜くようになった
- 突然タイアップでだけ褒めちぎる投稿
- その後すぐ競合ブランドも同じテンションで紹介
こういう投稿はすぐに「案件ね」で終わってしまいます。
2-2. 信憑性には「ファンであること」が必要
消費者の心を動かすには、
その人がブランドのファンであること
が不可欠です。
2-3. ファンとの関係を前提にしない施策は効かない
ここから、従来型の「単発のペイド投稿」の限界がはっきりしてきました。
3. クリエイター・マーケティングという言葉が選ばれた理由
3-1. 「インフルエンサー」というラベルから距離を取りたい
インフルエンサーマーケティング=単発のペイド投稿、というイメージが強くなりすぎたため、業界は新しい言葉を探し始めました。
3-2. クリエイター=顧客も含む広い概念
私の理解では、クリエイターには以下が含まれます。
- 従来のインフルエンサー
- SNSで発信している一般の顧客(ファン)
つまり、「SNSでコンテンツを作って発信している顧客」もクリエイターです。
3-3. 名前は変わっても、本質は同じ課題
結局、業界は名称を変えただけで、向き合っているのは
「どうファンから信憑性のある発信を生んでもらうか」
という同じ課題です。
4. 私が考える「クリエイター・マーケティング」の定義
「SNSでコンテンツを発信する人(インフルエンサー+顧客)と長期的な関係を築き、その人たちから信憑性ある発信を生むためのマーケティング」
5. クリエイターマーケティングの主な手法
- 投稿義務なしシーディング/ギフティング
- ライトな条件付きギフティング
- 有償タイアップ
- 成果報酬型(アフィリエイト)
- アンバサダー契約・長期パートナーシップ
6. シーディングとペイドの使い分け
いきなりペイドから始めないことが重要です。
まず既存のファンを見つけ、シーディングで関係を作り、その上で適切なタイミングでペイドを使う — という順番が成果につながります。
7. まとめ:名前が変わっても本質は「ファンと関係を築けるか」
インフルエンサーマーケという名前の限界が見えたことで、業界はクリエイターマーケという広い言葉に移行しつつあります。
しかし本質は、ブランドのファンでいてくれるクリエイターと、どれだけ関係を築けるか。
そこが問われているのだと私は考えています。
